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鉛の時代を駆け過ぎて [日付のある映画日誌1983]

30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。

1983年2月18日金曜 雪
 マルガレーテ・フォン・トロッタ『鉛の時代』

 渋谷ユーロスペース
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 世代から世代をつなぐ「女の映画」だ。
 70年代なかばの、過激派バーダー・マインホフ・グルッペのメンバーの獄中死。彼らのテロリズム理念を唾棄するにしろ黙殺するにしろ、後からくる世代に彼らの行動の全的な意味を語り伝えねばならないというこの映画の重たいメッセージを否定し去ることは正しくない。
 そうしたことは三冊目の著書『亡命者帰らず』の後半に固め書きした。繰り返さないし、繰り返せることでもない。http://atb66.blog.so-net.ne.jp/2014-12-14


 とにかく「子供たちを救え」というテーマはわたしのうちにずっと旋廻して、旋廻しつづけて止まなかった。テーマを発信してくる端緒となった第一の映画が『鉛の時代』だった。

 これらの主張の有効性がたとえごく過渡的にかぎられていたものだったにしても。


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崔洋一『十階のモスキート』 [日付のある映画日誌1983]

30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。
 
 1983年2月12日土曜 晴れ
 崔洋一『十階のモスキート』
 竹橋 科学技術館サイエンスホール

 PIA CINEMA BOUTIQUE ニューディレクターズ特集
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 カリスマ崔のデビュー作。現職の不良サツ官による強盗事件をあつかっているのはケシカラン、ということでお蔵入りになりかけた。公開予定未定のプレミア上映だった。
 『水のないプール』では、風呂の中のスカシッ屁みたいに不完全燃焼だった内田裕也の仏頂面が今回は全面爆裂。
 ただし、強盗に決起するまでの、博打やコンピュータ・ゲームにはまるおちこぼれ警官のいじましい日常が冴えている。
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 崔監督とは数ヵ月後、『日本読書新聞』の対談で会うことになった。媒体の党派性もあって、最初は警戒されたのか、目つきも愛想もずいぶんと硬かった。映画の公開日時はようやく決まっていた。

 ゴールデン街の某店の二階でビールを飲みながら、ぐっちゃらぐっちゃらと喋った。対談記事は、「一コマのメッセージ」として83年7月18日号に掲載された。
http://atb66.blog.so-net.ne.jp/2014-10-29

 梁石日『タクシー・ドライバー(狂躁曲)』映画化の想いも、このとき聞いた。原作者の人間的魅力について「あのオッサンは……」と崔さんが言いかけたと
ころで二人とも思わず笑ってしまった。雰囲気的にはそれで充分だったが、記事を読んだ人はわかりにくかったかもしれない。

 なおこの映画化が『月はどっちに出ている』として実現したのは十年後。

 話は一回りして、そろそろお開きというところ、えらく背の高い男がヌッと入ってきて「松田です」と自己紹介した。なるほど、ついこないだ『家族ゲーム』で新境地を見せてくれたスタアのシャイな素顔がそこにあった。
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タグ:松田優作
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ウィークエンド・シャッフル [日付のある映画日誌1983]

30年遅れの映画日誌。

1983.02.10 木曜
『ウィークエンド・シャッフル』
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1983.02.11 金曜
『ニッポン国古屋敷村』
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ご機嫌のロード・ムーヴィーだ [日付のある映画日誌1983]

30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。

 1983年1月22日土曜 晴れ
 ロバート・アルドリッチ『カリフォルニア・ドールス』

 三鷹オスカー

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 大いに満足。★五つ分だね。
 女子プロに興味がなくても大丈夫だった。ピーター・フォークのマネージャーがはまり役。

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 アルドリッチはこれが最後の監督作となった。高校生の時分観た大傑作『ヴェラクルス』がその第一作だったことを想えば、何というか感慨も深い。その間を熱心に追いかけたわけではないし、当たりもあり外れもありの並みのイメージだったけれど、全作の半分は観ている勘定だ。
 併映はフランシス・コッポラの『ワン・フロム・ザ・ハート』。いささかキモかった。
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1983年1月前半 [日付のある映画日誌1983]

30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。83年になって。

 1983.01.05 水曜
『誘拐報道』

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1983.01.14 金曜
『マル本 噂のストリッパー』
『実録色事師 ザ・ジゴロ』
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たまらなくETだった [日付のある映画日誌1983]

30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。

1983年1月7日金曜
 スティーヴン・スピルバーグ『E.T.』
 吉祥寺

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  1月8日土曜
 深作欣二『蒲田行進曲』、増村保造『この子の七つのお祝いに』
 テアトル新宿

 どちらも原作つき。
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 つかへいの映画版はそうでもなかったけれど、『この子の~』の後味があまりにも悪かったので、たまらず手近のオールナイト小屋に飛びこんだ。


 ヒデェ映画はもっとヒドそうな映画でもって癒すしかない。マルサスの法則。
 夜の放浪者が次第に立ち現われてくる。
 何かが耳元で囁く。
 その時は気づきもしなかったこと……。

 番組は――。
 『痴漢電車 ルミ子のお尻』『痴漢電車 よいOL悪いOL普通のOL』『日本痴漢大作戦』『ザ痴漢・ほとんどビョーキ』
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OH! 美保純だぜ [日付のある映画日誌1983]

30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。いよいよ83年になって。

 1983年1月4日火曜 雨
 吉祥寺
 小原宏裕『OH! タカラズカ』

 年明けは、美保純サマで。というわけでもなかったけれど。
 とにかく日活ロマンポルノ封切りを全制覇することに。
 
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 この日は他に、
『赤いスキャンダル 情事』
『女子大生の下半身 なーんも知らん親』
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かくて1982年は終わりぬ [日付のある映画日誌1982]

 1982年12月25日土曜 晴れ
 溝口健二『祇園の姉妹』『浪華悲歌』

 新宿
 1936年作品のニュープリント。溝口映画は、『雨月物語』と、六歳くらいで観た記憶がかすかに残っている『新平家物語』を再観したかったのだが、こちらで代用。

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 その後、同時代批評の忘年会へ。
 本年度は前年に続いてまたまた本数がダウンした。おそらく50本を割ってしまったみたいで。ワースト記録だな。
 長引いた執筆もあと二日ほどで終わるところまで漕ぎつけた。
 来年は観るぞ。並みのペースにもどすぞ。100から150本が適切な正常値。それ以上観ると脳みそが溶けるから。

 と、来る年の健闘を誓って、1982年は暮れたのであった。




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山谷越冬闘争支援映画上映会 [日付のある映画日誌1982]

1982.12.02 木曜
山谷ドキュメンタリー三本
山谷越冬闘争支援映画上映会
水道橋 全水道会館
ドキュメンタリー『山谷越冬闘争』『山谷春闘』『山谷夏祭り』
高橋悠治と水牛楽団コンサート

資料が見当たらないので、データのみ。
後の、監督二名を白色テロによって喪った山谷ドキュメンタリー・フィルムとは別の作品。
見物しに行っただけなので、主催団体のことは知らない。
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観たくもない映画を…… [日付のある映画日誌1982]

30年遅れの映画日誌のつけ足し。

 なにか、あまりに映画館に行かなかった年だったので、無理して観たくもない番組につき合い、疲れてしまったことを憶えている。

1982.10.30 土曜
『でんきくらげ』
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1982.11.06 
『ハンター』
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1982.12.10 日曜
『汚れた英雄』
『伊賀忍法帖』
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イタリア式大河ドラマの豪華絢爛 [日付のある映画日誌1982]

30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。

 1982年11月21日日曜 曇り
 ベルナルド・ベルトリッチ『1900年』

 新宿

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 歴史観なき歴史ドラマ。しかも五時間をこえる。
 大絵巻を魅せる豪華さはそれなりに備えている。けれどベルトリッチには歴史を動かすダイナミズムが何かという興味が本質的に欠けているのだろう。ところどころで苛々させられる。

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 ロバート・デニーロもジェラール・ドパルデューもドミニク・サンダもバート・ランカスターもスターリング・ヘイドンも空々しい。いちばん儲け役だったのは戯画化されたサイコ・ファシストを演じたドナルド・サザーランドだったわけ。
 ハリウッド史観で通した『レッズ』と五十歩百歩か。歴史に学ばないのは、どうやら人類の本性なのらしい。それなら映画そのものを享受するにしくはない。

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 その意味で、ポーリン・ケイルの『1900年』評が素晴らしかった。


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ジェット・リー若かったぞ [日付のある映画日誌1982]

 30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。

 1982年11月18日木曜 曇り
 チャン・シン・イェン『少林寺』

 吉祥寺

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 今はジェット・リーになっているリー・リン・チェイのデビュー作。
 というかカンフー・アクションの圧倒的な集団ドラマ。リーは集団のなかの最も若いヒーロー役だった。
 肉体と肉体の極限スピード勝負を魅せるという意味で、ブルース・リー亡き後のカンフー・アクションの正道を復活させる画期的な作品だ。そしてこの路線ではいまだにベスト作である。
 香港・中国合作の第一作。大陸中国映画の大雑把さと香港映画のいかがわしさとが微妙に合体しているところも懐かしい。

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『泥の河』をわたって戦後風景 [日付のある映画日誌1982]

 30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。

 1982年11月17日水曜 曇り
 小栗康平『泥の河』
 新宿

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 子供のころの夏休み、小学校の校庭に幕を張って「納涼教育映画の夕べ」がひらかれた。演し物は反戦映画だったような気がする。有り難がって観ないといけない代物だった。戦後民主主義の申し子としては平均的に通過した体験だろう。
 この映画を観ての感想とともに、そんな光景が想い出された。

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コスタ=ガブラス『ミッシング』 [日付のある映画日誌1982]

30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。

 1982年11月6日土曜 晴れ

 コスタ=ガブラス『ミッシング』

 新宿

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 『Z』『告白』『戒厳令』のコスタ=ガブラス、ハリウッド進出第一作。題材はチリのアジェンデ政権壊滅。韓国光州事態の衝撃もまだ生々しかったし、この種の白色テロリズムの終末は視えてこない時代だった。

 基本は、しかし、アメリカ人が野蛮な国において災難に遭うといったお決まりのパターンだ。ジャック・レモン、シシー・スペイセクと、異色のキャストの見せ所は充分。

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http://atb66.blog.so-net.ne.jp/2014-10-18-1


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きわめて独善的な故郷発見 [日付のある映画日誌1982]

30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。
 1982年9月25日土曜 晴れ
 ハル・アシュビー『帰郷』
 テアトル新宿
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 後味の悪い良心的反戦映画だった。
  「正義」の立場に立てない者を裁く独善的な視点は、たしかにジェーン・フォンダという女優の個性にぴったりだったんだが。
 ジョン・ヴォイトとブルース・ダーンは役柄を取り替えても大差ない。
 すべてが図式的。
 ヴェトナム・シンドロームの一つの答えがこれなんだろう。
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 併映はマイク・ニコルズ『卒業』。番組としては順当かな。
 仕方なくもういっぺん観ることに。
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クインの悪デコ役が圧巻だった [日付のある映画日誌1982]

 
 1982年9月12日日曜
 バリー・シアー『110番街交差点』
 自宅。またまたテレビ放映のお世話になってしまった。まあ、オリジナル合わせての三回目だから我慢しよう。

  70年代をとおしてのクライム映画の傑作。
だけど吹き替えじゃ、黒人マフィアのボスが「俺はMatherfuckerのジョンソンだ」(ムザーフッカーと しか聞こえなかった)だと唾を散らして凄むシーン(壁にはマルコムXのポートレート)はダイナシだし、ボビー・ウーマックのタイトル・ソングも流れてこな い。
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 画像はウォーリー・フェリスの原作本のカバー。角川文庫。

 ハーレムの賭場を襲って現金を強奪した三人組。利権を荒らされたイタリア系マフィアとその下請けの黒人ギャングが壮絶な追い込みをかける。そこにアンソニー・クインの悪徳刑事がエサを求めて喰いこんでくる。
 人種差別全開・裏金パクリ放題の悪デコを製作兼任のクインが快演。真面目一徹の黒人刑事(ヤッフェ・コットー)とのコンビも定石ながら、ラストで泣かせる。悪デコが正義に目覚めかけたとき、マフィア側は用済みになった老刑事をあっさりヒットマンの標的にしてしまうのだ。
 実録ドキュメント路線のタッチは同時期の東映やくざ映画と共通するが、鮮烈さでははるかにこちらが勝る。
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土曜日のこれが名画座だ [日付のある映画日誌1982]

30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。

 1982年8月14日土曜 曇り
 リチャード・T・ヘフロン『マイク・ハマー 俺が掟だ』
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 大塚名画座
 まだ若いアーマンド・アサンテがスケベ探偵ハマー役。
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 大塚の駅を降りるのは初めてだった。映画でも観るのでなければ無縁な街がある。
 典型的な「これが名画座用B級二本立て番組だ」の土曜日であった。

 もう一本は、ブライアン・デ・パルマ監督、ジョン・トラヴォルタ、ナンシー・アレン主演の『ミッドナイト・クロス』。
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『キャバレー日記』が82年度ベスト [日付のある映画日誌1982]

30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。

1982年7月24日土曜 晴れ
根岸吉太郎『キャバレー日記』
 吉祥寺

 この年のベスト。
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 日活ロマンポルノがロマンポルノであった時代。それは正確にいって、70年代の前半に限られる。この時期に、ロマンポルノの傑作群は集中した。理由は明らかだろう。以降の作品は何なのかというと――要するに、日活ロマンポルノの商標をつけただけの映画だ。

 いじましい青春のドラマ。『キャバレー日記』はじつに久しぶりに、商標ではなくその本質において日活ロマンポルノ以外のなにものでもないところのロマンポルノだった。
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 これをネタに映画評論が一本書けた。

 同時代批評6号
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http://atb66.blog.so-net.ne.jp/2014-10-17

 併映は同監督の『女教師 汚れた放課後』


 


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パニック・イン・テレビ [日付のある映画日誌1982]

30年遅れの映画日誌1982
タイトルと日付だけ。

1982.06.14 月曜
『オフサイド7』
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1982.06.23 水曜
『パニック・イン・スタジアム』
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 テレビで観ていたら、ちょうどいい場面のところで大事な電話がかかってきて……。

1982.07.08 木曜
『ロッキー3』
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http://atb66.blog.so-net.ne.jp/2014-10-14

1982.08.08 日曜
『鷲は舞い降りた』
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1982.09.05
『ガス燈』
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鉄の男ワイダ賛 [日付のある映画日誌1982]

30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。日付けの上では82年に突入する。


 1982年6月14日月曜 晴れ

 アンジェイ・ワイダ『鉄の男』

 有楽町
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 これはワイダの映画じゃない、という不当な感想が湧いてくる。

 ポーランド情勢の緊迫、反体制労働運動のつかの間の勝利。映画は同時代のすぐれたドキュメントたりえた。そしてここには『大理石の男』のテーマの見事な発展がある。

 にもかかわらず、作品のトーンにある楽天的な一面性がどうにも物足らなかった。結局、ワイダをペシミスティックな「悲劇の作家」と確定したい当方の身勝手な想いに引きずられる。

 ミハウェックは、ワイダの世界が外国人には理解しにくいローカルな限定性を持つことを強調している。それはポーランドがたどってきた歴史の特殊性の故だ。

 最も高名な『地下水道』や『灰とダイヤモンド』にしても、その特殊さがどれだけ了解されたかを考えてみれば、ミハウェックの見解も妥当だろう。

 にもかかわらず『鉄の男』は全世界の注目を浴びた作品だった。そしてその注目はニュース映画に向けられるような興味本位の質であったかもしれない。『鉄の男』にたいしてカンヌ映画祭が与えたパルムドール賞の名誉は、ちょうど、ごく最近にマイケル・ムーアの『華氏911』が勝ち取った称讃とまったく同様のものだったという気がする。

 社会主義国家の自浄性という「観念」をまだ信じていた。しかしあまりに楽天的な映画への違和感だけは旺盛に湧いてくるのだった。
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日本映画あり [日付のある映画日誌1982]

30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。


 1982年6月5日土曜 晴れ

 高橋伴明『TATTOOあり』

 新宿

 ピンクの星高橋伴明がATG配給の枠で初めて挑んだ一般映画。三菱銀行に人質をとって数十時間籠城した末、射殺された梅川昭男の半生を描く。

 『復讐するは我にあり』よりもこじんまりしてキュート。その分、叙情に流れるところも多くあったようだ。

 渡辺美佐子、下元史郎をはじめとする助演陣の多彩さが華だ。

 併映は長崎俊一『九月の冗談クラブバンド』

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 日活ロマンポルノの勢いもあって、70年代以降の独立プロダクション系ピンク映画は低迷した印象が強い。足立正生も大和屋竺もすでに無く、ポスト若松の座は、高橋や中村幻児などの全共闘世代に移行していた。

 そこに送られてきたATG映画は、何かの胎動を感じさせるものだった。

 というか、個人的な意味での「日本映画の時代」が始まりかけていた。
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深夜テレビに蘭はなかったって話 [日付のある映画日誌1982]

30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。 

 ロバート・アルドリッチ『傷だらけの挽歌』
 自宅 深夜テレビ
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 いや、がっかりしました。済みません。
 公開は71年の9月。
 ジェイムズ・ハードリー・チェイスの『ミス・ブランディッシに蘭はない』、二度目の映画化。
 というより『いちご白書』のキム・ダービーがお目当て。だったけれど……。
 かなり短縮版になっていた様子でもあり。
 観そこねていた映画ほど期待はもの狂おしく、また失望も膨れ上がるのだろう。
 小説では続編になる『蘭の肉体』シャーロット・ランプリングと比べるのは酷かしら。

 


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10秒死なせて [日付のある映画日誌1982]

タイトルのみで……

1982.05.01 土曜
『悪魔の部屋』
『マダム・スキャンダル』
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1982.05.10 月曜
『瞼の母』
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1982.05.15 土曜
『ドッグ・ソルジャー』
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1982.05.19 水曜
『ザ・ドライバー』
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蜃気楼のような『レッズ』 [日付のある映画日誌1982]

30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。

 1982年4月25日日曜 曇り
 ウォーレン・ビーティ『レッズ』
 有楽町
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 ロシア十月革命がハリウッド史劇の題材になる! ほとんど信じられないことみたいに思われた。
 蜃気楼のようなフィルムだった。
 振り返ってみれば、冷戦時代も最後の十年にさしかかっていた。この作品ももまた過渡期の産物だったのかもしれない。
 
 リードのロシア革命ドキュメントは文庫で手軽に読める。もちろん映画の内容とはあまり関連しない。
 


 ビーティのジョン・リードとダイアン・キートンのルイズ・ブライアント。史実を脚色したメロドラマとわかっていて
も引きこまれる。ジャック・ニコルソンのユージン・オニールは適役ではあったけれど、いかんせんいくら話をこしらえても出場所がない。リードとオニールの
接点がごく限られていたのだから当然の結果だ。
 「年上の愛人」メイベル・ダッジとのエピソードも割愛されたようだ。
 レーニン、トロツキーに次ぐ革命政権のナンバー3、ジノヴィエフ役を作家のイェジー・コジンスキーが演じている。コジンスキーは数年後に派手なパフォーマンスで自殺した。

 映画には実在する「歴史の証人たち」へのインタビューが挿入されている。ヘンリー・ミラーの分が印象に残る。例によってズレたことを喋っているのだが、とぼけた味わいがにじみ出ていた。死の直前ということもあったろう。

 


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土曜日のアンゲロプロス [日付のある映画日誌1982]

30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。

 1982年4月17日土曜 晴れ
 テオ・アンゲロプロス『アレクサンダー大王』
 神保町 岩波ホール
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 土曜の午後は神保町で古書店めぐりするという「JJおじさん」もどきが習慣になっていた。
 交差点にあるビルの10Fを見上げると、そこに濃密な映画的時間が宝物のように開けているようで眩暈にとらわれた。時間調整のために、買えそうもない高価な本を散策してまわる。
 そしてアンゲロプロスの三時間半にわたる苦行と悦楽に。

  

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『地獄の黙示録』ふたたびとか [日付のある映画日誌1982]

1982.03.31 水曜
『地獄の黙示録』
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1982.04.03 土曜
『野良猫ロック ワイルドジャンボ』
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1982.04.10 土曜
『蛇拳』
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1982.04.14 水曜
『マッドマックス』
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1982.04.21 水曜
『ウォリアーズ』
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新宿バーストシティ [日付のある映画日誌1982]

30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。


 1982年3月20日土曜 曇り
 石井聰互『爆裂都市』
 新宿
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 ロッカーだった陣内孝則と町田町蔵だった町田康。スターリン、泉谷しげる、上田馬之助などなど。パンクと暴走族と近未来アクションと。
 暴走も爆裂もほどほどで、まあ、こんなもんか。
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『シェフ殿ご用心』 [日付のある映画日誌1982]

 30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。

1982.02.27
『シェフ殿ご用心』

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『水のないプール』は枯れ果てたプール? [日付のある映画日誌1982]

30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。

 1982年2月27日土曜 晴れ
 若松孝二『水のないプール』

 新宿
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 ひさかたぶりの若松映画。複雑な心境になった。
 もともとシナリオ次第で良くも悪くもなる作家なんだが。内田栄一の脚本は不愉快なしろものだ。妙に媚びていて志に欠ける。
 内田裕也と若松のコンビは『飼育』以来。あのムキダシの情念はどこにいったのか。
 裕也の欲求不満がくすぶって、崔洋一の監督デビュー作『十階のモスキート』にまで飛んでいったのだろう。単純にヒデェ映画だなと断じることはできなかった。いろいろな意味で。
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 映画館通いと映画評論書きが、この時期あたりから同期してくる。
 
 「枯れ果てたプールで」 AtBL再録1


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『ガキ帝国』は名作だったんだな [日付のある映画日誌1982]

30年遅れの映画日誌。映画を観るためには映画館に出かけるしかなかった時代の話。

『ガキ帝国』は名作だったんだな

 1982年2月6日土曜 曇り
 井筒和幸『ガキ帝国』     新宿
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 快調なチンピラ青春グラフティ。よく考えれば、大阪在日映画の先駆でもあった。

 島田伸介・松本竜介のコンビに趙方豪がもうけ役でからむ。趙は京都のアングラ劇団満開座にいた役者。芝居での印象は弱かった。この作品から映画に転進。
一時期、日活ロマンポルノなどでよく見かけたが、残念ながら、ガキテイを超える突出はなかった。幻の作品『ガキ帝国・悪たれ戦争』は未見。


 けれどこの三人を食ってしまう存在感を見せたのは、升毅(ます たけし)だった。このあと、映画での活躍がつづかなかったことは惜しい。
 劇中、朝鮮語でとびかうセリフに日本語字幕が出る。こうした処理のみをみてもユニークな先駆性を持つ。井筒作品はデビュー作『ゆけゆけマイトガイ 性春の悶々』の湿っぽい基調から抜け出た。


 併映は根岸吉太郎『遠雷』。立松和平原作の文芸路線ではあるが、悪くはなかった。ジョニー大倉のベスト演技。
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